明日の予報は流星嵐。

放課後のプレアデスのことだけ書くと言ったな。実はあれは嘘だ。更新はあまりしません。

2023年書物8選

2023年は40冊の本を読みました。読書記録をつけ始めた2017年から、「1年に100冊の本を読む!」という目標を達成し続けていたのですが、ついに連続記録が途絶えてしまいました。元々電車通学の暇つぶしに始めた読書でしたが、大学卒業と同時に国外追放され、自転車通勤が可能になり、電車を利用する機会が激減したため、それに伴って読書量も減って当然でした。それでも細々と書物に向き合う時間を取ることが出来たのは良かったです。kindle unlimitedさん、アナタは素晴らしい!

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ブクログにまとめてドカッと登録してるので棒グラフに意味はありません。

いつも通り、今年出会った作品の中で、特に印象深かったものをラフに紹介したいと思います。◯◯賞は適当です。

最・美しいフレーズ賞受賞作:『モモ (岩波少年文庫)ミヒャエル・エンデ

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モモだよー(o・∇・o)

こちらはあまりにも有名すぎる一冊でしょうか。実家の本棚に、おそらく私が生まれる前からずっと置いてあったにも関わらず、今までまともに読んだことがありませんでした。

主人公のモモは、もじゃもじゃ頭で粗末な身なりをした少女。しかし彼女は、黙って話を聞くだけで、その人の悩みを解消できるという不思議な能力をもっていた。ある日、モモが暮らす街に時間どろぼうの「灰色の男たち」が現れ、人々から「時間」を奪っていき──

根強い人気があるのにも納得の面白さでした。児童文学って扱いみたいですが、多分子供の頃読んで、大人になって読み返すとより一層味わい深くなるタイプの作品だなと感じました。

時間どろぼうって発想がとても面白いですね。灰色の男に騙された人々はみな、無駄なことをしなくなり、時間を節約して効率的に生きるようになるのですが、効率的な生き方は果たして人生における幸せに通じるのか?多くの人に刺さりそうなトピックだなと思います。

「ねえ、おしえて、」とうとうモモはききました。「時間て、いったいなんなの?」
(中略)
モモはじっくり考えてみました。
「時間はある――それはいずれにしろたしかだ。」
思いにしずんでつぶやきました。
「でも、さわることはできない。つかまえられもしない。においみたいなものかな?でも時間て、ちっともとまってないで、動いていく。すると、どこからかやってくるにちがいない。風みたいなものかしら?いや、ちがう!そうだ、わかった!一種の音楽なのよ――いつでもひびいているから、人間がとりたてて聞きもしない音楽。でもあたしは、ときどき聞いていたような気がする。とってもしずかな音楽よ。」

……。

一種の音楽なのよ――いつでもひびいているから、人間がとりたてて聞きもしない音楽。でもあたしは、ときどき聞いていたような気がする。とってもしずかな音楽よ。

スゥーーーーー……

時間のことを音楽に例えられるの何?どういう感性?

最・コミカル賞受賞作:『キャンタービル屋敷の幽霊』 オスカー・ワイルド

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豪邸に住み着いた幽霊と、そこに引っ越してきた家族との心温まるバトル。

キャンタービル屋敷に住み着く幽霊は、300年もの間、屋敷に越してきた住人を怖がらせ続けてきたベテラン。そこに怪奇現象など全く信じない超現実主義のアメリカ人一家が引っ越してきて……?

幽霊が登場しますが、ホラー要素はありません。むしろ、クスッと笑えて、最後はぽっと優しい気持ちになれる、そんな素敵な一冊でした。比較的短く、挿絵も豊富なので、絵本のような、またおとぎ話のような懐かしさに触れたいときにおすすめかもしれません。

また、こちらの翻訳版は非常に読みやすく感じました。「ですます」調で書かれているので、児童文学チックな雰囲気がありますが(実際、内容的にもちょうどいいかもしれません)、年齢を問わず楽しめる作品だと思います。

好きだったフレーズ↓

死とはきっと、かように美しいものなんじゃろう。柔らかい茶色の土の中に横たわって、風にそよぐ草の下で、沈黙に耳を澄ませて。昨日もなく、明日もなく、時を忘れ、人生を忘れ、安らぎに包まれること。

うん…綺麗だね……R.I.P...

(300年前に屋敷で起きた殺人事件の生々しい痕跡を今に伝える「消えない血痕」を見て)

「まったく馬鹿馬鹿しい!」ワシントンが声を上げました。「ピンカートン印の染み抜き、<特落ち>と、洗剤の<ピカイチ>を使えば、そんなのわけもないさ」
そう言って、慌てふためくアムニーさんが止める間もなく、ワシントンは床に膝をついて、黒の眉墨に似た小さな棒でごしごしと床を擦りました。ほどなく、血痕はきれいに消えてしまいました。

「さすがはピンカートンだな」

特落ちくんは神ってワケ。コメディ映画のワンシーンを見ているような気持ちになりますね。

最・北国賞受賞作:『誰もいない夜に咲く (角川文庫)桜木紫乃

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北海道を舞台にした短編集。素敵な文章表現が多く出てきたのが印象的な一冊で、著者の他の作品も読んでみたくなりました。どの短編にも、決して順風満帆な人生を送っているとは言えない女性がメインの登場人物として出てきます。北海道という舞台のチョイスも相まって、各作品からどことなく寒さというか…物悲しさを感じました。

特に、ストリップ劇場で働く女性・志おりと、記者になる夢を持ちながらほそぼそとバイトを続けている潤一の奇妙な関係を描いた『フィナーレ』が好みでした。別に積極的に見に行きたいとは思わないけど、それでもストリップに対する見方が少し変わったかも。

好きだったフレーズ↓

美津江は洋子とのあいだにある少ない記憶をひとつひとつ波間に並べた。空白を埋めてゆくのは樹の言葉だった。海風を吸い込む。通り過ぎた時間が波間で跳ねる。──『風の女』

う〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん綺麗で好き!俺も記憶を一つ一つ波間に並べてェよォ😭

伊達さゆりさんセレクトありえん心臓バクバク大興奮賞受賞作:『おまじない』 西加奈子

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とある事情により、2023年、最も心臓バックバッッックになりながら読んだ一冊です。

まずは簡単な紹介から。こちらは8つの短編から成る短編集です。自分は短編集が好きで、かつ収録されている作品も面白かったので、まず読書という点で純粋に楽しむことが出来ました。収録されている短編のうち、特に好きだったのは、『燃やす』と『あねご』です。

『燃やす』

母親からは女の子らしい格好をするなと言い聞かされて育ってきた主人公は、本当は可愛くなりたいと思っていた。そしてその実、彼女はとても可愛らしい見た目をしていた。ある日、いつも履いている(履かされている?)ズボンではなく、スカートを履いて出かけた際、見知らぬ男性に乱暴されてしまう…。

本当は可愛くなりたいのに、可愛いことで男に目をつけられ、母親からは言わんこっちゃないとばかりに「ほらね!」と心無い言葉を吐かれてしまう。やがて彼女は、自身が通う学校に勤める用務員のおじさんと出会う。おじさんは焼却炉であらゆるものを燃やし続ける日々を送っていた。彼女はそんなおじさんにこう問いかける。

「言葉を燃やせませんか?」

可愛く有ることを良しとしない毒親的な母と、可愛くなりたい少女。母から投げつけられた「ほらね」という言葉をなかったことにすべく、言葉を燃やしてほしいと頼む姿にちょっと神秘的なものを感じました。

『あねご』

キャバクラで働く女性が主人公。彼女は17のときから酒を飲み始め、大学に入っても飲み続け、周囲から「あいつやべーわw」と笑われても、飲みの場こそが自分の居場所だと信じ、とにかく飲むことで周囲からの承認を得る日々を送っていた…。

酩酊と酩酊のはざまでふと我に返り、「飲むこと」以外、自分には何もないことを自覚するシーンは切なくもあり、どこかすごくリアリティを感じました。

 

さて、この本との出会ったのは、伊達さゆりさんがブログで「今読んでいる本」として紹介していたのがきっかけでした。

ブログを読んだ私は、直ちに『おまじない』の拝読を開始。

………。

普段は読んでる本の感想とかめったにつぶやかないのですが、こらえきれず漏れてしまっています。このときの読書体験は忘れられない……。

上で紹介した『燃やす』『あねご』以外にも、”合コンで知り合った6歳年下の男性と関係を持ち、未婚のままうっかり妊娠してしまった38歳の女性”が主人公の『マタニティ』等、「読んだんだよな……この文章を、さゆりちゃんが………」となりながらの読書は、正直言ってドチャクソありえないくらい興奮しました…。

こういう文章を読んでるスクールアイドル、好きだなぁ…

全然本作と関係ない話を続けますが、同じブログの中で、『コンビニ人間』(村田沙耶香)も最近読んだと書かれていたので、さゆりちゃんはリアリティを感じる作品だったり、生々しい描写があったりする系もイケる口なんじゃないかと思ってます(コンビニ人間とか面白いけどぐちゃぐちゃで気味悪いし)。

このことを踏まえ、インスタのメンション機能とかいう神を使って、もけライブラリから以下の3冊をさゆりちゃんにオススメしてみました(意図せずどれも漢字四文字作品になっててワロタ)。いつかふとしたタイミングで読んで、少しでも面白いと感じてくれたら嬉しいなぁ…と思いながら……(本当に読んでくれたら、そのとき俺は絶頂して死ぬことになるけれど)

@伊達さゆりさん また読んだ本リストを公開してください。from もけ。

最・読後満足賞受賞作:『猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)小川洋子

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稀に出だしから「これはクるかもしれない…」と思うものに出会うことがありますが、これは自分にとってまさしくそういう作品でした。

主人公は、類まれなチェスの才能を盛って生まれた少年。「マスター」という太った男性にチェスを教わり、次第にその才能を開花させていく。チェステーブルの下に潜り、猫を抱きながら次の一手を考えるという独特のプレイスタイルが特徴。やがて彼は、ロシアの偉大なチェスプレイヤー、アレクサンドル・アリョーヒンになぞらえて、リトル・アリョーヒンと呼ばれるようになる──。

本作には、とにかく「狭い場所に囚われている」モチーフが数多く登場します。それは、デパートの屋上動物園から降りることができなくなった象のインディラであり、壁の隙間から出られなくなってしまったという噂を残して消えた少女・「ミイラ」であり、バスの中で死んだマスターであり、そしてチェス盤の下に潜って、あるいは人形の中に隠れてチェスをするリトル・アリョーヒン本人です。

その一方で、本作ではチェスの対局風景が、宇宙や海に例えて表現されます。動かない主人公が、無限に広がる世界でどこまでも自由に羽ばたいていく。これらの対比がとても美しく感じました。

また作品全体を通じて、文章の美しさにもすごく惹かれました。この物語はハッピーエンドとは言えませんが、読後に長い溜息をつきたくなるような満足感に浸れる作品でした。

封を破ると、三つ折りにされた便箋が一枚出てきた。そこには時候の挨拶も、近況報告も、署名もなく、ただ真ん中に、 【e 4】  とだけ記されていた。忘れようもないミイラの筆跡だった。

一週間後、リトル・アリョーヒンは返事を書いた。 【c 5】  それが彼の返事だった。

こんな手紙のやり取りしてみてーーよ😭

最・時を超えた友情賞受賞作:『トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫)フィリパ・ピアス

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扉を抜けた先は、別の時間軸の世界でした──。

ひょんなことから叔父・叔母の家で過ごすことになったトム。ある日の真夜中、家の裏口の扉をくぐった先で、昼間は存在していなかったはずの「庭園」に足を踏み入れる。トムはそこでハティという女の子と親しくなるが、扉をくぐる度、前に訪れたときと庭園の様子が異なっていることに気が付いていく。トムがいるこちらの世界と、ハティがいるあちらの世界では、時間の進み方が違っていたのだ。庭園を訪れる度、成長していくハティ。やがて、ハティはトムの年齢を追い抜いていき──。

『モモ』と同じく、時間をテーマにした作品。意図せずコレも児童文学に分類されるようです。今年は児童文学にハマった年だったのかもしれない。トムとハティ、二人の時間がどんどんズレていくのに合わせて切なさが募っていくのを感じました。

また、扉の向こうにある世界は何なのか?ハティとは何者なのか?実在の人物なのか?といった謎を明らかにしようとする懸命な試みも読んでいてとても面白かったです。ラストシーンへの収束も見事。

その二度目の別れのようすを、あとになってグウェンおばさんは夫のアランにこうつたえた。 「トムが駆けあがっていくとね、ふたりはしっかりと抱きあったの。まるで、もう何年もまえからの友だちみたいで、けさ知りあったばかりだなんてとても思えなかったわ。」

続きは本書にて。

最・惑星科学賞受賞作:『月まで三キロ(新潮文庫』 伊与原新

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著者は元惑星科学者なんだとか!道理で…と思わせるような詳細な記述が多く、個人的にとても楽しかった作品。全体的に、専門用語が頻繁に出てくるものの、読み物としてすっと入ってくるのがすごい。著者の専門を活かしつつ、科学しすぎてないところがいいのかも。

短編集ですが、本書のタイトルにもなっている『月まで三キロ』は、タイトルで「あれがテーマかな…?」とピンとくる人はいるかも。扱っているトピックはかなり重めですが、希望を感じさせるエンドは良かったです。

他にも、

  • アラフォーの独身女性がとあるコンパで気象オタクの男性に出会い、いい感じになっていく淡い恋物語を描いた『星六花』
  • 中学受験のストレスを抱えた少年が、夏休みに訪れた北海道で、ひたすらアンモナイトを採掘し続けているおじいさんと出会い、「何かに熱中する」とは何なのかを知っていく『アンモナイトの探し方』
  • とある研究所で研究員として働く「プレアさん」と、一人娘を育てながら食堂を営む父親が織りなす物語である『エイリアンの食堂』

など、地球惑星科学的なテーマを扱いつつ小説として面白く仕上げているところが良かったし、個人的にめちゃめちゃ憧れを抱いてしまいました。小説書いてみてー。

「今わたしが素粒子の研究をできているのは、このルーペのおかげ。だから、ずっと身につけてる。これさえあれば、わたしは、どこにいても大丈夫」
「どこにいても?」
「そう。ジャングルでも砂漠でも、工場のラインでもネオン街でも。このルーペをのぞけば、そこにわたしの本当の居場所が見える。これをもらった頃のわたしに戻れる。わたしがわたしでい続ける勇気をくれる」 ──『エイリアンの食堂』

素敵です素敵です素敵です素敵ですハイ好きです好きです好きです。

最・異常賞受賞作:『むらさきのスカートの女 (朝日文庫)』 今村夏子

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2023年、最・異常賞を贈呈します。かなり好みな作品でした。芥川賞受賞作という肩書に気圧されること無く、軽い気持ちで読める部類だと思います。案外短いし。

いつもむらさきのスカートを履いていて、いつも同じ公園の決まったベンチの決まった位置に座って、クリームパンを食べている女性。彼女は、近所ではちょっとした有名人であり、「むらさきのスカートの女」と呼ばれていた──。

この作品、いい意味で気味の悪さというか、不気味な空気が常に漂っています。本作では、基本的に主人公である「わたし」視点での描写が続きます。主人公は近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性に"強い関心"を持っていて、細かすぎるほどに彼女の様子を観察しています。住んでいるアパートも、勤め先も、どうやって通勤しているかも、何時に家を出るのかも、知っているのです。だいぶキモくない?

やがて、むらさきのスカートの女は、主人公の計らいによりホテル従業員としての職を得るのですが、初出勤の様子も、職場での様子も淡々と語られ続けるのはかなり違和感があって怖いです。主人公は、むらさきのスカートの女のストーカーなんでしょうか…?

そんな不安感や緊張感、違和感が絶えず続いていくのが本作の魅力かなと思います。読み終えた後は「その後はどうなったの!?」と言いたくなってしまうような終わり方をしますが、本作に関して言えばその先を描くことは蛇足に過ぎないでしょう。異質感を楽しみたいときに多分おすすめです。

 

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今年は短編小説と児童文学が多めだったかも。2024年も、よき書物との出会いがありますように!( ◜ᴗ◝)📚